8月3日夜(日本時間で4日朝)、アレクサンドル・ソルジェニーツィンが亡くなりました。
1918年生まれ、89歳でした。
ソルジェニーツィンという作家は、非常にシンボリックな存在でしたから、彼の死はほんとうに、ひとつの時代が終わったのだということを実感させます。
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亀山郁夫氏が、ソルジェニーツィンを追悼して寄稿していました。
敬虔なロシア正教徒であり、キリスト教的ヒューマニズムの視点から社会の「悪」を告発する作家精神は、同世代の誰よりも19世紀的であり、その意味ではレフ・トルストイやドストエフスキーの正統な後継者だったと言える。
社会主義の非人間性を糾弾し、検閲の廃止を訴えたソルジェニーツィンは、体制への批判と賛美を「二枚舌」で使い分けた多くの知識人と違い、ドン・キホーテのような直情さで権力に闘いを挑んだ。その最高傑作はソ連最大のタブーを克明に記録した『収容所群島』(73~76年刊)だ。(亀山郁夫「ソルジェニーツィン氏を悼む」読売新聞2008年8月5日朝刊)
亀山氏が言うように、思想的には彼は、ロシア農村の古い宗教的美徳を称える保守派です。文学的にも、多くが19世紀の伝統的なリアリズムを負っており、モダニズムの精神からは遠い所に位置していました。
『収容所群島』や『赤い車輪』も、文学作品として成功しているかどうかについては意見が分かれるようです。
- 主要作品 :
『イワン・デニーソヴィチの一日』、『マトリョーナの家』、『ガン病棟』、『煉獄のなかで』、『収容所群島』、『赤い車輪』、『仔牛が樫の木に角突いた』