- 復活〈下〉 (新潮文庫)
- 発売元: 新潮社
- 価格: ¥ 660
- 発売日: 2004/12
★トルストイ「復活」(上巻)
トルスイ『復活』、下巻を読了しました。
『復活』は、"「淪落の女」を救い出す"恋物語の系譜だと思います。
しかし、刑務所とそこで生きる囚人たちを徹底して写実し、裁判制度や貴族の土地所有制度など、犯罪を生む貧困の構造をつくっている社会体制に、批判の眼差しを向けているのは、他の"「淪落の女」を救い出す"恋物語にはない試みです。
今回、メロドラマの背景にあるトルストイ主義を、色濃く感じました。
すごく、「転回」後のトルストイらしい作品です。
"「淪落の女」を救い出す"というテーマは、19世紀のロシア文学の流行でした。
男性が自己を犠牲にして女性に尽くすことは、当時の知識人の間では、理想の恋とされていたようです。
売春婦に恋をして、彼女を奈落から救い出そうと献身的に尽くす男性の愛は、ほんどんどが報われずに、拒絶されてしまうんですよね。
そういう意味では、悲恋物語です。
ペテルブルグのような20万都市に、3~4万人もの売春婦がいたという悲惨な現実を、やっぱり反映していたのでしょう。
読了日:下巻 2008年7月22日