2008/04/13

トルストイ「イワン・イリイチの死」

イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)
イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2006/10/12

トルストイ『イワン・イリイチの死』(1886年)を読みました。
古典新訳文庫の望月哲男訳です。

とても良いです。
感動した、とかそういう言葉では感想を正しく表現できないのですが、このテーマで書きうる最高レベルに到達していると思いました。
終章は、すぐにはよく意味が分からなくて、でも強烈な印象で、何度も何度も繰り返し読みました。

「なんと良いことだろう、そしてなんと簡単なことだろう」彼は思った。「だが痛みは?」彼は自問した。「痛みはどこへいった? おい痛みよ、おまえはどこにいる?」
 彼は耳をすました。
「ほら、ここだぞ。かまうな、痛みなど放っておけ」
「では、死は? 死はどこだ?」
 彼は自分がかねてからなじんできた死の恐怖を探してみたが、見出せなかった。死とは何だ?恐怖はまったくなかった。死がなかったからだ。
 死の代わりにひとつの光があった。

すばらしいですね。
トルストイ、すごいなぁ。


読了日:2008年4月13日